目次
海外FXの税金の基本を理解しよう

海外FXを利用して利益を出した場合、その利益に対しては税金が発生します。国内FXと海外FXでは税制が異なるため、注意が必要です。ここでは、まず海外FXに関する税金の基本的な知識を解説します。
国内FXと海外FXの税制の違い
国内FXの場合、利益に対して一律20.315%の申告分離課税が適用されます。これに対し、海外FXで得た利益は「雑所得」として分類され、総合課税の対象になります。総合課税とは給与所得や他の収入と合算して税率が決まるため、利益が大きくなるほど税率も高くなるという特徴があります。
海外FXの利益に適用される税区分(雑所得)
海外FX取引による利益は、税法上「雑所得」に該当します。雑所得は他の所得(給与所得、不動産所得、事業所得など)と合算し、所得の総額に応じて所得税が計算されます。所得税は累進課税方式をとっており、所得が増えるほど税率が高くなります。そのため、海外FXの利益が多いほど税金負担が増える可能性があります。
確定申告が必要な利益の基準
海外FXで年間20万円以上の利益が出た場合、確定申告が必要になります。この基準は、給与所得者や年金所得者に対して適用されるもので、副業として海外FXを行っている方は特に注意が必要です。利益が20万円以下の場合でも、他に確定申告が必要な所得がある場合は、申告する必要があります。
海外FXの税金について正しく理解し、適切な申告と納税を行うことが、後のトラブルを避けるために非常に重要です。
海外FXと国内FXの税金の違いとは?

FX取引を行う際、税金のルールは取引業者の所在地(国内または海外)によって異なります。ここでは海外FX業者と国内FX業者それぞれの税金ルールの違いを徹底的に解説し、正確な理解につなげます。
課税方式の違い(申告分離課税 vs 総合課税)
FX取引にかかる税金を理解する上で、まず重要なのが「課税方式」です。
国内FXの税金:申告分離課税
国内FXの場合、税率は一律20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)と決まっています。利益額がいくらになっても一定税率で課税されます。また、給与所得など他の所得とは合算せず、FX取引だけで独立して計算を行います。そのため、取引で利益が大きくなっても税率が変動することはありません。
海外FXの税金:総合課税(雑所得)
海外FXの利益は雑所得として扱われ、「総合課税」という仕組みで課税されます。これは、給与所得や不動産所得、他の副業の収入など、その他の所得と合算されて計算されます。合算した結果によって税率が変動する累進課税が適用されるため、利益が増えるにつれて税率が上昇します。
以下は所得税の累進課税率表(令和7年(2025年)最新版)です。
課税所得金額 |
所得税率 |
控除額 |
195万円以下 |
5% |
0円 |
195万円超~330万円以下 |
10% |
97,500円 |
330万円超~695万円以下 |
20% |
427,500円 |
695万円超~900万円以下 |
23% |
636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 |
33% |
1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 |
40% |
2,796,000円 |
4,000万円超 |
45% |
4,796,000円 |
これに住民税(通常10%)が加算されるため、所得が多いほど高い税負担となる可能性があります。
税率や税負担の比較
ここまでの内容からわかるように、海外FXと国内FXでは利益額が大きくなった場合の税負担が異なります。
具体例を示して比較してみましょう。
【年間利益が300万円の場合】
種類 |
課税方式 |
税率(所得税+住民税) |
税額(目安) |
国内FX |
申告分離課税 |
約20% |
約60万円 |
海外FX |
総合課税 |
所得税10%+住民税10%=約20% |
約60万円 |
このケースでは、両者に大きな差はありません。
【年間利益が1,000万円の場合】
種類 |
課税方式 |
税率(所得税+住民税) |
税額(目安) |
国内FX |
申告分離課税 |
約20% |
約200万円 |
海外FX |
総合課税 |
所得税33%+住民税10%=約43% |
約430万円 |
利益が大きくなるにつれて、海外FXの税負担が圧倒的に高くなることが分かります。海外FXでは利益の増加に比例して税率が上がるため、大きな利益を出した際の納税額は非常に大きくなる可能性があります。
損益通算と繰越控除の有無
FX取引の税金を考える上で、「損益通算」と「繰越控除」という制度は非常に重要です。海外FXと国内FXでは、この仕組みにも明確な違いがあるため、しっかりと確認しましょう。
損益通算とは?
「損益通算」とは、ある取引や収入で生じた損失を、別の取引や収入から得た利益と相殺(差し引き)する制度です。この仕組みを利用することで課税対象となる所得が減り、結果として支払う税金が軽減されます。
国内FXと海外FXでは損益通算の対象範囲に違いがあります。
項目 |
国内FX(申告分離課税) |
海外FX(総合課税:雑所得) |
損益通算の範囲 |
申告分離課税のFX・CFD等と損益通算可能 |
雑所得内での損益通算のみ可能(給与所得や事業所得などとの通算不可) |
国内FXの場合
国内FXの場合、申告分離課税制度を採用しているため、同じく申告分離課税が適用される他の投資(例えば先物取引、国内業者のCFD取引など)と損益通算ができます。ただし、株式投資(特定口座)との損益通算はできないため、注意が必要です。
海外FXの場合
海外FXは「雑所得」として「総合課税」に分類されます。総合課税に分類される所得内、つまり雑所得同士の損益通算しかできません。そのため、給与所得や事業所得、不動産所得といった異なる所得区分とは損益通算できない点に注意が必要です。
海外FXの場合、他の副業収入(アフィリエイト収入など雑所得に分類される収入)がある場合にのみ、それらとの通算が可能です。
具体例でイメージをつかみましょう。
【具体例】
例えば、国内FXと海外FXで損益通算の範囲を比べてみましょう。
国内FXで年間100万円の利益があり、国内先物取引で年間60万円の損失が出た場合
⇒ 利益(100万円)-損失(60万円)=差引40万円が課税対象となります。
海外FXで年間100万円の利益があり、副業(アフィリエイトなど雑所得)で60万円の損失があった場合
⇒ 雑所得内で通算できるため、差引40万円が課税対象です。
しかし、以下の場合には注意が必要です。
海外FXで年間100万円の利益があり、国内FXで60万円の損失があった場合
⇒ 課税方式が違うため損益通算不可で、海外FXの利益100万円全額が課税対象です。
つまり、海外FXでは、給与所得など他の所得区分とは損益通算できず、同じ雑所得内でしか通算できないという点が重要です。
繰越控除とは?
繰越控除とは、1年間に生じた損失を翌年以降に繰り越し、その翌年以降の利益と相殺できる制度のことです。これも国内FXと海外FXでは大きな違いがあります。
種類 |
繰越控除の可否と期間 |
国内FX |
最大3年間の繰越控除が可能 |
海外FX |
繰越控除は一切不可 |
国内FXでは最大3年間にわたり損失を繰り越すことができるため、翌年以降に利益を出した際に税負担を大きく軽減できます。例えば、初年度に100万円の損失を出し、翌年に100万円の利益を出した場合は、翌年の課税対象をゼロにできます。
一方、海外FXではこの繰越控除制度自体が認められていません。
例えば、以下のような状況を考えてみましょう。
- 2024年(1年目):海外FXで100万円の損失が発生
- 2025年(2年目):海外FXで120万円の利益が発生
国内FXの場合、この状況では前年の100万円の損失を繰り越すことができるため、翌年の120万円の利益から前年の100万円の損失を差し引き、課税対象を20万円(120万円-100万円)に抑えることが可能です。
しかし、海外FXの場合はこのような繰越制度が適用されないため、2025年の利益120万円全額がそのまま課税対象となってしまいます。
つまり、海外FXではたとえ前年にどれほど大きな損失を出したとしても、翌年以降の利益との相殺(繰越控除)が一切認められておらず、税負担の軽減措置がないため注意が必要です。
この違いは特に利益と損失が交互に発生するトレーダーや、年間の利益額に大きな変動があるトレーダーにとっては、税務面で非常に重要なポイントになります。
損益通算と繰越控除に関するまとめ(国内FXと海外FXの比較)
最後にもう一度わかりやすくまとめると、以下の通りです。
項目 |
国内FX |
海外FX |
損益通算 |
申告分離課税制度内の取引同士で可能(国内FX、先物取引、国内CFD等) |
雑所得の範囲内(同じ雑所得内)でのみ可能。他の所得(給与所得や事業所得など)とは損益通算不可 |
繰越控除 |
最大3年間の繰越控除可能 |
一切不可 |
このように、税務の面において、国内FXは「損益通算」や「繰越控除」といった制度を上手く活用することで、課税所得を抑えることができ、税務上有利に働きます。一方、海外FXはこれらの制度が制限されているため、税務的にはやや不利になる傾向があります。
海外FXでトレードを行う際は、このような税務的な違いを十分に理解した上で、慎重な資金管理や利益管理、取引戦略を組み立てる必要があります。
海外FXで利益が出たら確定申告は必須!

海外FXで利益を出した場合、「確定申告」は原則として避けて通れません。この項目では、海外FX取引に関する確定申告の基本的なルールや申告が必要なケース、申告しなかった場合のリスクについて、詳しく解説していきます。
確定申告が必要な利益額の目安とは?
海外FXで得た利益は「雑所得」に分類され、給与所得など他の所得と合算して課税されます。そのため、原則として年間の合計所得が「20万円」を超える場合は、確定申告が必要になります。
具体的に言うと、以下のようなケースでは確定申告が必要です。
給与所得者(会社員や公務員)の場合
海外FXを含む副収入の利益が年間20万円を超える場合、申告義務があります。逆に年間20万円以下であれば、確定申告の義務はありません(ただし、住民税の申告は別途必要になる場合があります)。
専業主婦や学生など、他に所得がない場合
海外FXで年間利益が48万円を超える場合(基礎控除額の48万円を超える場合)は申告が必要です。48万円以下であれば課税所得がゼロとなり、所得税はかかりませんが、住民税は申告義務が発生する場合があります。
まとめると、
状態 |
確定申告が必要な利益の目安 |
給与所得者(会社員・公務員) |
副収入(海外FX利益)が年間20万円超 |
無職・主婦・学生など給与収入がない方 |
年間利益が48万円超 |
この目安を必ず覚えておきましょう。
申告しないとどうなる?ペナルティとリスクを解説
海外FXで利益を得ているにもかかわらず、確定申告をしなかった場合、あるいは申告漏れや所得隠しなどをしてしまった場合には、さまざまなペナルティやリスクが伴います。ここでは、万が一確定申告を怠ってしまった場合に発生する具体的なペナルティとリスクを詳しく解説します。
海外FXでの無申告・申告漏れに課されるペナルティの種類
海外FX取引で利益を上げたにも関わらず、申告期限内に申告をしなかった場合、主に以下の3つのペナルティが課されます。
① 無申告加算税
② 延滞税
③ 重加算税(悪質な所得隠しの場合)
それぞれ順番に詳しく説明していきます。
① 無申告加算税とは?【税額の15%〜20%】
無申告加算税とは、確定申告の期限内に所得税の申告を行わなかった場合に課される罰則的な税金のことです。原則として、次のように加算されます。
課される無申告加算税 |
内容 |
本来の納税額のうち50万円以下の部分 |
15% |
本来の納税額のうち50万円を超える部分 |
20% |
具体例
海外FXの利益に対して本来納めるべき税金が100万円だった場合
- 50万円以下の部分:50万円 × 15% = 7.5万円
- 50万円を超える部分:残りの50万円 × 20% = 10万円
- 合計で17.5万円の無申告加算税が、本来の税額100万円に追加されます。
※ ただし、税務署の指摘を受ける前に自ら自主的に申告をした場合、加算税率は5%に軽減される措置があります。無申告に気づいた場合は、速やかに自主的に申告しましょう。
② 延滞税とは?【延滞期間に応じて課税】
延滞税は、確定申告期限後に税金を納付した場合に課される利息的な性質の税金です。納付が遅れた期間が長ければ長いほど、税額は増加します。
延滞税の税率(利率)は、毎年多少の変動がありますが、おおよそ次のように定められています(2025年時点の目安)。
延滞期間 |
延滞税の税率(年率) |
期限後2ヶ月以内 |
年2.4%~2.7%程度 |
期限後2ヶ月を超えた場合 |
年8.7%程度 |
具体例
本来納付する税金が100万円で、納付が6ヶ月遅れた場合
- 最初の2ヶ月:100万円 × 約2.5% × (2ヶ月÷12ヶ月) = 約4,166円
- 2ヶ月を超えた4ヶ月分:100万円 × 約8.7% × (4ヶ月÷12ヶ月) = 約29,000円
- 合計で約33,166円が追加課税されます。
延滞税は遅れれば遅れるほど税負担が増えるため、納税遅延は絶対に避けましょう。
③ 重加算税とは?【悪質な所得隠しには最大40%】
「重加算税」とは、税務署から「悪質な所得隠し」や「意図的な脱税」と判断された際に課される最も重い罰則的な税金です。海外FX取引においても、意図的に利益を隠したり、書類を改ざんしたりしたことが発覚すれば、この重加算税が適用されるリスクがあります。
特に海外FXの場合、「海外業者だから税務署に把握されない」と安易に考えてしまい、利益の隠蔽を試みるケースがありますが、近年では海外送金記録や口座情報の国際的な情報共有により、税務署の目は非常に厳しくなっています。
重加算税の税率と仕組み
重加算税は非常に厳しい税率が設定されており、申告漏れの状況に応じて次のように課税されます。
区分 |
重加算税の税率 |
無申告の場合 |
本来の納税額の40% |
過少申告の場合 |
本来の納税額の35% |
ここでのポイントは、「無申告」の状態で税務署に所得隠しが発覚した場合が最も悪質とみなされ、高い40%の重加算税が適用されるということです。
重加算税が課されるケース(海外FXの具体例)
例えば、海外FXで年間500万円の利益があり、本来の納税額が約150万円だったと仮定しましょう。この利益を意図的に申告せず、税務署の調査で発覚した場合、以下のような処分になります。
税金の内訳 |
課される金額(例) |
本来の税額 |
約150万円 |
無申告加算税(50万円まで15%、超過部分20%) |
約27.5万円 |
重加算税(無申告で悪質と認定された場合40%) |
約60万円 |
延滞税(支払遅延期間に応じ年最大8.7%) |
遅延期間分 |
結果として、元々の税額150万円に加えて、さらに約87.5万円+延滞税という非常に大きな負担が課されます。
悪質な場合は刑事罰(脱税罪)の可能性も
税務署がさらに悪質性が高いと判断した場合、単なる金銭的ペナルティにとどまらず、刑事事件として告発されるリスクがあります。
特に海外FXでは、以下のようなケースが悪質と判断される可能性があります。
- 海外FX業者との送金履歴を隠すために口座名義や資料を偽造・改ざんした場合
- 利益を仮想通貨に変えて意図的に所得を隠蔽した場合
- 海外口座への送金を巧妙に隠す目的で複数の銀行口座を利用した場合
これらの悪質な行為が発覚した場合、所得税法違反(脱税罪)として刑事告発され、以下のような刑事罰を受ける可能性があります。
脱税額 |
刑事罰の内容 |
高額の場合 |
10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科 |
その他の場合 |
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科 |
刑事罰になると、社会的信用の喪失や社会生活に深刻な影響が及ぶため、絶対に避けるべきです。
海外FXの利益は税務署にバレやすい理由
海外FXで得た利益を申告しない人の中には、「海外業者を使っているから日本の税務署にはバレないだろう」と誤解している方も少なくありません。しかし、近年は税務署が海外口座や取引情報を把握する体制が急速に強化されており、海外FXの利益を申告しないまま放置するリスクは非常に高くなっています。
ここでは、なぜ海外FXの利益が税務署に発覚しやすいのか、その理由を詳しく解説します。
① 国内銀行への海外送金の記録からバレる
海外FXを利用する際、ほとんどのトレーダーは利益を日本国内の銀行口座に送金して引き出します。しかし、日本国内の銀行に対して海外から送金があった場合、金融機関には税務署に報告する義務があります。
特に以下のケースでは、税務署が重点的にチェックしています。
1回の送金額が100万円を超える場合
外為法(外国為替及び外国貿易法)により、金融機関は海外送金が100万円を超えると税務署に対して必ず報告する義務があります。これは「国外送金等調書」と呼ばれ、税務署が容易に所得の流れを把握できる仕組みとなっています。
複数回に分けて定期的に海外送金がある場合
小分けに送金すればバレにくいと考える人もいますが、定期的または継続的な海外送金が複数回あると、税務署から疑いの目を向けられる可能性が高まります。
つまり、海外からの送金は非常に目立つため、利益を無申告で隠すことは事実上不可能と考えるべきでしょう。
② クレジットカードやデビットカードの入金履歴からバレる
海外FXへの入金方法として、日本で発行されたクレジットカードやデビットカードを利用する方が増えています。この場合、入金時にカード会社を通じて、資金の移動履歴が残ります。
近年、税務署はカード会社との情報共有を進めており、以下のような状況があると所得隠しを疑われる可能性があります。
- カードを使って海外FXに頻繁に高額な入金をしているが、申告所得が低いケース
- カード決済額に比べて申告された所得額が不自然に少ないケース
こうした状況になると、税務調査の対象になりやすく、所得の隠蔽が疑われることになります。
③ 国際的な口座情報共有制度(CRS)の導入で海外口座が把握されやすくなっている
近年、海外FXの利益を国内で申告しないまま放置することが極めて難しくなっている大きな理由として、「国際的な口座情報共有制度(CRS)」の導入があります。
ここでは、このCRS制度について具体的に解説し、海外FX取引の利益が税務署に把握されやすくなった背景と仕組みを分かりやすく説明していきます。
CRS(共通報告基準)とは?
CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)とは、国境を越えた「租税回避」や「脱税」を防ぐために、各国間で口座情報を自動的に共有する国際的な制度のことです。
もともとCRSは、富裕層が海外の銀行口座を使って所得や資産を隠し、税金逃れをすることを防ぐ目的でOECD(経済協力開発機構)が主導して導入されました。現在、約100か国以上がこのCRSに参加しており、日本も2018年から参加しています。
CRSが導入されたことで、以下の情報が各国の税務当局間で自動的に共有されます。
- 氏名、住所、生年月日などの個人情報
- 口座番号・口座残高
- 年間の利息・配当収入・その他の収益
これにより、日本の税務署は海外に存在する日本人名義の口座情報を容易に把握できるようになりました。
CRSによって海外FX取引が発覚する仕組み
「海外FX業者は日本の税務署に協力しないだろう」と考える人もいますが、CRSは海外の金融機関(銀行・証券会社など)を通じて口座情報を共有する仕組みです。そのため、直接FX業者が情報を提供しなくても、FX業者が使っている海外の金融機関(銀行)が自動的に情報を各国の税務当局に共有します。
具体的な流れは以下の通りです。
- 海外FX業者の口座から日本人トレーダーが出金を依頼する
- 海外FX業者が利用している銀行から、日本の銀行へ送金が行われる
- 海外の銀行が自動的に口座情報(送金額、名義人情報)を税務当局に報告する
- 日本の税務署に対してその情報が自動的に共有される
この仕組みにより、従来は把握が難しかった海外FX業者を利用した日本人トレーダーの資金の動きが、日本の税務署に簡単に把握されるようになりました。
例えば、日本人が海外FXで利益を得て、それを海外の銀行口座に送金した場合、その銀行口座を管理する海外金融機関は、CRSのルールに従って次のような情報を日本の税務署に提供します。
- 口座の名義人(氏名、住所、生年月日などの個人情報)
- 口座番号と残高
- 1年間の利息や収益(FXの利益を含む)
- 資金の入出金履歴
日本の税務署はこの情報を受け取り、日本国内での申告状況と照合するため、未申告や所得隠しがあった場合にはすぐに特定されます。
特に注意が必要なのは、CRS制度が導入されている国々が非常に幅広く、主要な金融機関が所在する多くの国(欧州、アジア、オセアニア諸国など)が含まれている点です。
具体的には、CRSに参加している国や地域はすでに100以上にのぼり、次のような代表的な金融ハブが含まれています。
- 欧州(スイス、イギリス、ドイツ、オランダ、ルクセンブルクなど)
- アジア(シンガポール、香港、韓国、中国、マレーシアなど)
- オセアニア(オーストラリア、ニュージーランドなど)
- 中東地域(アラブ首長国連邦、カタールなど)
- 北米(カナダなど)
つまり、従来までは「海外の銀行口座を利用すれば日本の税務署に情報が伝わらない」という考えが一部でありましたが、現在では主要な金融国のほぼすべてがCRSに加盟しているため、この考え方は完全に通用しなくなりました。
日本の税務署が国際的な枠組みを通じて受け取る情報は極めて正確であり、海外の銀行に利益を蓄えて申告を逃れようとしても、数年以内には税務調査で明確に把握される可能性が非常に高くなっています。
実際に、CRS導入後、日本の税務署による海外資産や海外所得に関する調査は年々厳しくなっており、以下のような場合には特に調査対象になりやすいです。
- 海外口座に定期的に送金し続けている場合
- 海外口座に蓄えた利益を国内に送金せず、申告を一切行っていない場合
- 海外の銀行口座で大きな金額の資産を長期間保有しているにもかかわらず、申告所得が非常に少ない場合
CRSによって各国税務当局の連携が強化されたことで、こうした状況はすぐに日本の税務署に把握され、追徴課税や重加算税が課されるリスクが極めて高くなっています。
そのため、現在では海外口座を利用した利益の隠蔽や無申告は非常に危険であり、絶対に避けるべき行為と言えるでしょう。
確定申告の期限と手順(2025年最新版)

海外FX取引で利益を上げたら、正確に確定申告を行うことが必須です。ここでは、2025年版の海外FXに関する確定申告の期限や具体的な手順について詳しく解説していきます。
2025年(令和7年)分の確定申告の期限は?
海外FXで得た所得(利益)は「雑所得」として取り扱われ、原則として以下の期間内に確定申告をする必要があります。
2025年(令和7年)1月1日~12月31日までの所得
⇒ 確定申告期間:2026年(令和8年)2月16日(月)~3月16日(月)まで
例年、確定申告の期間は2月16日~3月15日ですが、2026年の3月15日は日曜日にあたるため、翌日(16日・月曜日)まで延長されます。
この期間を過ぎると、「期限後申告」として延滞税や無申告加算税の対象になる可能性があるため、期間内に必ず提出しましょう。
海外FXの利益を確定申告する際の具体的な手順
海外FXで得た利益を確定申告する手順は、以下の4ステップになります。
【ステップ1】取引履歴を整理し、利益を円換算で計算する
まずは1年間の取引履歴をすべて整理し、利益を計算します。海外FXの利益計算は、次の方法で行います。
課税対象となる利益の計算方法
課税利益 = 1年間の確定利益(決済済み損益)- 経費(通信費、書籍代、セミナー費用など)
利益の円換算方法
海外業者から日本国内の銀行口座に送金した際の実際のレートを使って円換算します。
送金時の為替レートが分からない場合は、国税庁が公表している「TTM(仲値)」を使用します。
【ステップ2】必要書類を準備する
海外FXの利益を確定申告する際は、税務署への提出書類として以下の書類を準備する必要があります。
必要な書類 |
入手方法・詳細説明 |
①年間取引報告書(年間ステートメント) |
海外FX業者の取引プラットフォームまたはマイページから取得。
1年間の取引履歴、利益額、損失額が明記された書類です。 |
②入出金の履歴が分かる書類(銀行通帳・海外送金明細書) |
利益を国内口座に送金した記録を証明するために必要です。銀行通帳やオンラインバンキングの明細を印刷したものを準備しましょう。 |
③経費の領収書(書籍代・通信費・セミナー費用など) |
海外FXに関連して発生した経費を計上する場合、領収書や請求書が必要になります。
例:FX関連書籍購入時のレシート、FXセミナーの参加費領収書、通信費の明細書など |
④マイナンバーが確認できる書類 |
マイナンバーカード、マイナンバー通知カードなど。電子申告(e-Tax)でも提出を求められることがあります。 |
これらの書類は、申告後5年間の保管が義務付けられています。税務署から追加の提出要請があった場合や、税務調査が行われた場合には、すぐに提示できるように整理しておく必要があります。
特に海外FXの場合は、国内取引よりも税務署が慎重にチェックする傾向があるため、以下のようなポイントを押さえて保管しておくとよいでしょう。
- 年間取引報告書(ステートメント)は印刷して紙ベースで保管すると同時に、PDFなど電子データでも保管する。
- 銀行の入出金履歴や送金明細書も印刷または電子保存で確実に残す。
- 領収書やレシートなど経費の証拠書類は日付順に整理し、保管する。
- 年度ごとにファイルやフォルダを分け、必要書類を整理して管理すると、万一の税務調査でも安心です。
これらの対応を日頃から習慣化しておくことで、後々の税務手続きが非常にスムーズになり、税務署から指摘や調査が入った場合でも迅速に対応することができます。
【ステップ3】申告書類を作成する(国税庁の確定申告書作成コーナーを利用)
確定申告に必要な書類が揃ったら、次は申告書類を作成していきます。
海外FXの利益は「雑所得」として申告しますが、申告書類の作成は主に以下の2つの方法があります。
① 国税庁の「確定申告書作成コーナー」を使ってオンラインで作成(推奨)
国税庁の公式ウェブサイトには、『確定申告書作成コーナー』という無料で利用できる便利なツールがあります。画面の指示に従い必要項目を入力していくだけで、簡単に申告書が完成します。
確定申告書作成コーナーでの具体的な作成手順
ステップ1:国税庁ホームページにアクセス
『確定申告書等作成コーナー』をクリック。
ステップ2:申告書作成の開始
「作成開始」を選択し、申告書Bを選びます(雑所得の申告は「申告書B」を利用します)。
ステップ3:所得情報の入力
「雑所得」を選択し、海外FXで得た利益を入力します。
取引の明細や海外送金時のレートなどを参考にして、利益額を正確に円換算で入力します。
ステップ4:経費や控除の入力
通信費や書籍代、セミナー参加費など、経費として計上する項目があれば忘れずに入力しましょう。
基礎控除(48万円)や、医療費控除、社会保険料控除など各種控除も入力可能です。
ステップ5:納付する税額の確認
全ての所得・控除情報を入力後、納付する税額が自動的に算出されます。
ステップ6:申告書を印刷または電子送信(e-Tax)
完成した申告書を自宅のプリンターで印刷し、郵送・持参するか、電子申告(e-Tax)でそのままオンライン送信することも可能です。
② 税務署の窓口で申告書を作成(税務署で相談・作成)
オンラインでの申告書作成に不安がある場合は、税務署に直接訪問して相談・作成することも可能です。
ただし、確定申告期間中(2月16日~3月16日)は非常に混雑しますので、早めに訪問するか、あらかじめ電話で相談予約を取るとスムーズです。
税務署を利用する場合、事前に以下の書類を準備しておきましょう。
- 海外FX取引の年間ステートメント(取引報告書)
- 入出金の証明書類(銀行口座の入金履歴など)
- 経費の領収書・レシート類
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 本人確認書類(運転免許証・保険証など)
海外FXトレーダーには「e-Tax(電子申告)」が特におすすめ
近年は特にオンラインの電子申告(e-Tax)が推奨されています。e-Taxを利用するメリットとしては以下が挙げられます。
自宅からいつでも手軽に申告ができる
24時間受付可能なので、忙しい方でも確実に提出できる
書類の提出ミスが防げる
還付金がある場合、紙ベースの申告よりも早く受け取れる(通常約3週間で還付金が振り込まれる)
e-Taxを利用するには事前にマイナンバーカードが必要になりますので、早めに準備しておくことをおすすめします。
具体的には、電子申告(e-Tax)を行うために以下の手続きが必要です。
① マイナンバーカードを取得する
市区町村役場で申請可能ですが、申請からカードの交付まで通常1ヶ月程度かかります。確定申告の時期は役所も混み合うため、余裕を持って早めに手続きを開始しましょう。
② ICカードリーダーまたはスマートフォンを用意する
パソコンでe-Taxを利用する場合、マイナンバーカードを読み取るためにICカードリーダーが必要です。家電量販店やオンラインショップで購入できます。
最近ではスマートフォンのマイナンバーカード読み取り機能を利用して、スマホだけでも申告が可能になっています。スマホ申告の場合はICカードリーダーは不要です。
③ マイナポータルとの連携(設定)を行う
電子申告を利用するには、「マイナポータル」を利用してマイナンバーカードを登録します。登録後、国税庁の確定申告書作成コーナーから電子申告がスムーズに行えるようになります。
これらの準備を整えておくことで、忙しい確定申告期間中でも自宅から手軽に申告できるようになり、提出期限を守って安全に海外FX利益を申告することが可能となります。
【ステップ4】申告書を提出し、期限内に納税する
申告書類の作成が完了したら、最後は申告書の提出と納税です。このステップは期限内に必ず済ませることが重要で、特に海外FXで利益が出ている場合には期限を守らないと大きなペナルティが課される可能性があります。詳しい手順を順番に解説します。
確定申告書の提出方法
確定申告書の提出方法は、主に以下の3つがあります。それぞれの特徴を詳しく確認しておきましょう。
① オンライン提出(e-Tax)【推奨】
最近ではオンラインで申告できる「e-Tax」が最も便利です。具体的な手順は以下の通りです。
- 手順1:確定申告書作成コーナーで申告書を完成させる
- 手順2:完成後、「電子送信」を選択し、マイナンバーカードで本人確認を行う
- 手順3:そのままオンラインで送信完了(24時間可能)
e-Taxを使えば、自宅からいつでも申告できるため、忙しい方に特におすすめです。また、申告期限ギリギリでも即時提出が可能です。
② 郵送で提出する方法
オンライン提出が難しい場合は、税務署への郵送でも提出可能です。具体的な方法は以下の通りです。
- 手順1:完成した確定申告書を印刷して署名・捺印する
- 手順2:管轄税務署宛に郵送する(普通郵便より書留郵便を推奨)
- 手順3:控えを返信してもらうため、返信用封筒(切手を貼付)を同封する
郵送の場合、提出期限日の消印有効です。ただし、書類不備などによる再提出が発生する可能性があるため、余裕を持って提出しましょう。
③ 税務署に直接持参する方法
税務署へ直接持参して提出する方法もあります。確定申告期間中は窓口が非常に混雑するため、時間に余裕を持って訪問することをおすすめします。
- 手順1:確定申告書類一式(控えも含む)を準備する
- 手順2:管轄税務署の窓口に持参し提出(受付印をもらい控えを受け取る)
この方法では、提出時に書類の不備を窓口で指摘してもらえるメリットがあります。
納税方法(2025年最新版)
確定申告を提出した後は、申告で計算された税額を期限内に納付します。納税期限は申告期限と同じ2026年3月16日(月)です。
主な納税方法は以下の4つです。
方法 |
特徴とメリット |
① 銀行・郵便局窓口(現金納付) |
現金で直接納付。領収書がその場で発行されるので安心。 |
②口座振替 |
事前登録が必要。自動引落しで納め忘れを防止。 |
③ クレジットカード払い(オンライン) |
自宅から24時間手続き可能。ポイントも貯まるメリットあり。 |
④ QRコード決済(スマホ決済) |
PayPay、LINE PayなどQRコード決済アプリから簡単に納税可能。 |
最近では特に、クレジットカード払いやQRコード決済が人気です。自宅から簡単に納税できるため、忙しい方には特におすすめです。
確定申告や納税が期限を過ぎた場合のリスク
もし期限内に確定申告や納税が行われなかった場合には、以下のようなペナルティが課されるため、注意が必要です。
- 無申告加算税(15~20%)
- 延滞税(納期限翌日から納付日まで日割りで発生、年最大8.7%)
- 重加算税(悪質な場合、最大40%)
これらのペナルティを避けるためにも、海外FX取引を行う方は必ず期限内に確定申告書の提出と納税を済ませましょう。
特に、利益が大きい場合や前年よりも所得が増加した場合には、納税資金の確保を前もって計画的に行っておくことが非常に重要です。
また、確定申告の手続きは初めての方には複雑に感じられる場合も多いため、以下のような点を事前に意識しておくと安心です。
- ① 余裕をもって申告書を作成する
- ギリギリになって慌てて書類作成をすると、ミスや漏れが生じやすくなります。
- 書類に不備があると再提出が必要になるため、さらに時間がかかります。
- ② e-Tax(電子申告)を積極的に活用する
- オンライン申告を利用すれば、いつでも手軽に提出できます。
- 特に忙しい方にとって便利で確実な方法です。
- ③ 税金の納付方法を早めに決定し、準備する
- クレジットカード納付やQRコード決済など、手軽な納税手段を選ぶことで、期限内納付を確実に実行できます。
- ④ 不明点や不安があれば早めに税務署や専門家に相談する
- 分からないままにせず、税務署や税理士に事前に相談し、スムーズな申告を目指しましょう。
海外FX取引に関する確定申告を正しく理解し、きちんとした手続きを行うことで、税務上のリスクを回避し、安全にトレードを続けることができます。
海外FXの税金を節税するためのポイントとコツ

海外FXで利益を得ると高額な税金が発生する可能性があります。特に海外FXは総合課税の「雑所得」に分類され、利益が多くなるほど高い税率(最大55%)が適用されます。
そのため、合法的かつ効果的に税金を節約する方法を知っておくことは非常に重要です。
この項目では、海外FXで利益を得ているトレーダーが節税するためのポイントやコツを具体的かつ詳細に解説していきます。
海外FXで認められる経費の範囲を把握する
海外FXの利益にかかる税金を節税するためには、まず経費として計上できる費用を正確に理解することが大切です。
雑所得としての海外FXに関連する経費は、「海外FXで収益を得るために直接必要であると認められる費用」であれば経費として認められます。
以下は代表的な経費項目の例です。
経費の種類 |
具体的な例 |
通信費 |
トレードのためのインターネット回線費用、プロバイダー料金 |
パソコン・スマホ関連費用 |
トレード専用のパソコン購入代金、スマートフォン料金の一部(使用割合に応じて) |
書籍代・情報収集費用 |
FXに関連する書籍や雑誌購入代金、有料の情報サイト利用料 |
セミナーや勉強会の参加費用 |
FXセミナーの参加費、交通費、宿泊費(遠方の場合) |
ソフトウェアやツールの購入費用 |
チャート分析ソフト、有料のトレードツール、売買シグナルツール |
振込・送金手数料 |
海外FX口座への入金や利益送金時に発生した銀行手数料 |
これらの費用を計上することで、課税所得を減らし、納税額を節約できます。
ただし、プライベートでも使う可能性があるもの(例:スマホ料金)は、FX取引に使った割合のみを経費計上できる点に注意しましょう。
経費を漏れなく計上するためのポイント
節税を最大限に活用するには、経費を漏れなく計上することが重要です。そのために以下の習慣をつけましょう。
- レシートや領収書を必ず保管する
- 取引に関係する出費があった場合は、必ず領収書をもらい日付順に保管します。
- 年間を通して定期的に経費を記録する
- 確定申告の時期になって慌てないように、定期的に経費をExcelや家計簿アプリで管理しましょう。
- 経費か判断に迷う場合は早めに税理士に相談する
- 不明な経費項目があれば、自己判断せずに税理士や税務署に相談して明確にしておきます。
損失を活用して節税する方法(損益通算の活用)
海外FXでの税金を抑える方法の一つとして、「損失を活用する」方法があります。これは「損益通算」と呼ばれる制度を利用するもので、海外FXで出た損失を他の所得(同じ雑所得の範囲内)と相殺することで、課税対象となる所得を減らす仕組みです。
以下で、損益通算の活用方法や注意点を詳しく解説します。
損益通算とは?
損益通算とは、同じ所得区分内(海外FXの場合は雑所得)で発生した損失を、他の利益と相殺して課税所得を圧縮できる制度のことです。
国内FXの場合は申告分離課税となり、FXや先物など特定の所得同士の損益通算が認められていますが、海外FXは総合課税(雑所得)に分類されるため、以下の条件で損益通算が認められます。
項目 |
損益通算の可否 |
海外FX同士の損益通算 |
◯(可能) |
海外FXと副業収入(雑所得)との損益通算 |
◯(可能) |
海外FXと給与所得や事業所得など他区分所得との損益通算 |
×(不可) |
海外FXと国内FXとの損益通算 |
×(不可・課税方式が異なるため) |
海外FXで損益通算できる具体例
損益通算のイメージをより具体的に理解するために、以下の例を参考にしてください。
【例1:海外FXの利益と海外FXの損失を通算するケース】
- A業者での年間利益:100万円
- B業者での年間損失:50万円
⇒ 合計の所得:100万円(利益)-50万円(損失)=50万円(課税対象所得)
このように、同じ雑所得に該当する海外FX業者同士の損益は相殺可能です。
【例2:海外FXと副業(アフィリエイトなど)の収入を通算するケース】
- 海外FXの年間利益:80万円
- 副業(アフィリエイトなど)の年間損失:30万円(サーバー代や広告費など経費が収入を上回った場合)
⇒ 合計の所得:80万円(FX利益)-30万円(副業の損失)=50万円(課税対象所得)
このケースでも、両者が「雑所得」に分類されるため損益通算可能です。
【注意:以下のケースは損益通算できません】
損益通算は便利な節税手法ですが、すべての損失が無条件に通算できるわけではありません。特に海外FXでは、以下のようなケースでの損益通算が認められていないため注意が必要です。
- ① 異なる所得区分との損益通算は不可
- 海外FXは「雑所得(総合課税)」に分類されるため、同じ雑所得内での損益通算のみ認められます。
- 給与所得・不動産所得・事業所得など、異なる所得区分の損失と利益を通算することはできません。
【具体例:通算不可のケース】
-
- 海外FXで100万円の損失が発生し、給与所得が400万円あった場合でも、給与所得と海外FXの損失を通算することはできません。
- ② 国内FXの損失との損益通算は不可
- 国内FXは「申告分離課税」、海外FXは「総合課税」のため、この2つは別区分の所得とみなされます。
- 国内FXと海外FXでそれぞれ損益が出た場合でも、両者の間で損益通算を行うことは認められていません。
【具体例:通算不可のケース】
-
- 海外FXで150万円の利益、国内FXで100万円の損失が出た場合、海外FXの利益150万円全額が課税対象になります(国内FXの損失を差し引くことはできません)。
- ③ 繰越控除は不可
- 国内FXでは最大3年間損失を繰り越して翌年以降の利益と相殺できますが、海外FXでは損失の繰越控除が一切認められていません。
- そのため、ある年に海外FXで損失が出ても、その損失を翌年の利益から差し引くことはできません。
【繰越控除不可の具体的なケース】
例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- 2024年(1年目):海外FXで100万円の損失が発生
- 2025年(2年目):海外FXで150万円の利益が発生
国内FXであれば、前年の損失100万円を翌年に繰り越して控除できるため、
- 2025年の利益150万円 - 2024年の損失100万円 = 課税対象は50万円
となります。
しかし、海外FXの場合は、損失の繰越控除が一切認められていないため、
- 2025年の利益150万円がそのまま課税対象となります。
つまり、2024年の損失100万円は翌年以降の利益と相殺できず、節税効果を得られません。これが海外FXでの繰越控除不可の非常に重要なポイントです。
【繰越控除不可が与える影響(海外FXの注意点)】
海外FXでは、損失が発生したとしても、その損失を翌年以降に繰り越して利益と相殺することが認められていません。このルールがトレーダーにどのような具体的な影響を与えるのか、注意点をわかりやすく解説していきます。
① 損失が税務上まったくメリットにならない
国内FXの場合、一度発生した損失は翌年以降3年間にわたり利益と相殺することができます。そのため、仮に今年大きな損失を出したとしても、将来的に利益を上げれば、税務的なメリットを享受できます。
一方で、海外FXでは損失の繰越控除ができないため、以下のような状況が起こります。
ある年に海外FXで大きな損失を計上した場合、その年に雑所得(副業など)が他にない限り、税務上はまったく節税効果を得ることができません。
つまり、その年に出た海外FXの損失は、同じ年度内の他の雑所得としか損益通算ができないため、以下のような場合は税務メリットがほとんどありません。
【具体例】
- 2025年に海外FXで100万円の損失が出た
- 同じ年に副業収入など、他の雑所得は一切ない
このようなケースでは、損益通算の対象となる雑所得が存在しないため、100万円の損失はその年に限り無駄になってしまいます。さらに、この100万円の損失を翌年以降の利益と相殺する(繰り越す)ことも不可能です。
このため、海外FXで大きな損失が発生した年度に、他の雑所得がない場合には、結果として税務上のメリットが一切ないことになります。
② 利益と損失の波が激しいトレーダーには不利
海外FXトレーダーの中には、年間ごとに利益と損失が大きく変動する人も多くいます。そのようなトレーダーにとって、この繰越控除が認められないことは非常に大きな不利になります。
例えば、
- 1年目:100万円の損失
- 2年目:100万円の利益
というように、年度をまたいで利益と損失が交互に発生した場合を考えると、
- 国内FXでは、1年目の損失を2年目の利益と相殺できるため、2年目の課税所得をゼロにできます。
- しかし海外FXでは、1年目の損失を翌年以降に繰り越して利益と相殺することが認められていないため、2年目に発生した利益はそのまま課税対象となります。
具体的に言うと、
- 1年目(2024年):100万円の損失が発生
- 2年目(2025年):100万円の利益が発生
という状況の場合、
- 国内FXであれば、前年(2024年)の損失を翌年(2025年)の利益と相殺することが可能なため、2025年の課税所得をゼロにすることができます。
- しかし海外FXの場合、2024年に生じた損失100万円を翌年以降に繰り越して控除することは一切できません。そのため、2025年の利益100万円は丸ごと課税対象となります。
その結果、海外FXを利用しているトレーダーは、利益と損失が交互に生じるような状況では、利益が出た年だけが一方的に課税対象となり、損失が出た年の税務上のメリットが一切ないため、トータルで見ると税負担が重くなりやすいというデメリットがあります。
さらに、利益と損失が年度ごとに激しく変動するトレードスタイルの方ほど、海外FXのこの「繰越控除が認められない」という特徴が不利に働く傾向があります。そのため、海外FXトレーダーは利益のコントロールや経費の管理をより計画的・戦略的に行う必要があるのです。
海外FXの繰越控除不可がもたらす問題点のまとめ
- 前年度に出た損失を翌年以降の利益と相殺できないため、損失が無駄になる。
- 利益・損失が年ごとに変動するトレーダーには非常に不利な制度。
- 年間の利益額を意識的にコントロールし、節税のために戦略的な対応が必要。
このように、海外FXのトレーダーは繰越控除が利用できない制度上の制約を十分に理解し、税金面でのリスクを最小限に抑えるよう努めることが重要になります。
海外FX税金計算に役立つおすすめシミュレーションツール3選
海外FXでの利益を正確に計算し、確定申告や節税対策をするためには、税金シミュレーションツールを活用することが便利です。特に海外FXは総合課税となるため、所得の金額や経費などの条件によって課税額が大きく変動します。
ここでは、海外FXトレーダーに特におすすめの税金計算シミュレーションツールを3つ、具体的に紹介します。
① マネーフォワード クラウド確定申告(MFクラウド確定申告)

特徴とおすすめポイント
- マネーフォワードが提供するクラウド型の会計・確定申告サービスです。
- 海外FX取引の収入・経費を入力すると、税金額が自動的に計算されます。
- 副業収入や他の雑所得ともまとめて管理可能なため、海外FXだけでなく、副業トレーダーにもおすすめ。
主なメリット
収支の記録が簡単で、スマホアプリでいつでも入力可能。
自動的に課税所得と納税額をシミュレーションしてくれるため、年間を通じて税負担が把握できます。
e-Taxにも対応しているため、確定申告の手間が大きく軽減されます。
料金
プラン |
料金 |
パーソナルミニ |
月額980円(年額11,760円) |
パーソナル |
月額1,280円(年額15,360円) |
② 弥生のクラウド確定申告ソフト(やよいの青色申告オンライン)

特徴とおすすめポイント
- 日本でもっとも普及している会計ソフトの1つ「弥生」が提供するクラウド型サービス。
- 海外FXの収益管理、経費計算、課税額シミュレーションが手軽に可能です。
- 税務知識が少ない方でも使いやすい簡単操作が魅力です。
主なメリット
海外FXの雑所得計算に対応しているため、特別な設定なく正確に税金計算できます。
レシートや領収書をスマホ撮影で簡単に経費計上でき、節税にも役立ちます。
税理士サポート付きのプランもあり、初めての海外FX確定申告でも安心。
料金
プラン |
料金 |
セルフプラン |
初年度無料(2年目以降 年額8,800円) |
ベーシックプラン(税理士相談付き) |
年額13,200円 |
③ freee(フリー)確定申告

特徴とおすすめポイント
- クラウド型会計ソフトの定番であり、個人トレーダーに人気の高いサービスです。
- 海外FXの収益や雑所得の管理、複数の所得源の一括管理に最適。
- 特に個人事業主や副業をしている方、他の雑所得がある方におすすめです。
主なメリット
海外FXで発生した収益や経費を簡単に入力でき、リアルタイムで納税額をシミュレーション可能。
経費の管理や所得の分類が非常に直感的で使いやすく、初心者にも適しています。
e-Taxへの申告連携もスムーズで、手間なくオンライン申告が完了します。
料金
プラン |
料金 |
スターター |
月額1,480円(年払い14,800円) |
スタンダード(税理士相談対応) |
月額2,980円(年払い29,800円) |
海外FX税金シミュレーションツールを選ぶ際のポイント
海外FXの利益計算・税金計算においてシミュレーションツールを選ぶ際には、以下のポイントを意識するとよいでしょう。
- 海外FX収益の入力や雑所得計算が簡単に行えること
- 課税所得や納税額のシミュレーションがリアルタイムに反映されること
- 副業やその他の収入源との統合管理が可能なこと
- e-Taxと連携しており、オンライン申告が手軽にできること
- 料金体系が明瞭であること
特に海外FXの場合、収益の記録方法や課税所得計算の方法が複雑になりやすいため、簡単で使いやすく、税務知識が少ない人でも迷わず使えるサービスを選ぶのがおすすめです。
まとめ:海外FX税金シミュレーションツール3選比較表

サービス名 |
マネーフォワード確定申告 |
弥生の青色申告オンライン |
freee確定申告 |
操作の簡単さ |
◎ |
◎ |
◎ |
海外FX対応 |
◯ |
◯ |
◯ |
副収入との連携 |
◎ |
◯ |
◎ |
e-Tax連携 |
◎ |
◯ |
◎ |
料金 |
月額980円~ |
初年度無料~ |
月額1,480円~ |
おすすめポイント |
簡単かつ多機能 |
税理士相談付きプラン有 |
初心者向けUI |
海外FXの利益計算と税務申告をスムーズに進めるために、上記のツールを利用して、手間をかけずに正確な申告を行うことをおすすめします。